「アートラインかしわ2009」― 「古着」が内包する"生"と"死"の諸相
吉本直子出前制作プロジェクト"FURUGI"crossing the border
(記)柏木じゅん子 2009.11

柏駅周辺の路地裏は、ファッショナブルな古着屋やカフェが並び、「裏ハラ(裏原宿)」になぞらえて「裏カシ」と呼ばれている。流行に敏感な若者たちで賑わう「裏カシ」を中心に、「古着の街」としても知られている柏で、古着を使ったアートプロジェクト<"FURUGI"crossing the border>が行われた。

作品「響生」

制作者は、京都を拠点に国内やヨーロッパで個展・グループ展を行っている現代美術作家の吉本直子さん。まず、プロジェクトの第1部として、11月1日(日)〜3日(火)までの3日間、古着のシャツを洗濯糊で固めて、立体作品を作るワークショップが開催された。

吉本直子さん

ワークショップ会場の二番街の細井歯科医院前では、子どもたちが嬉々として白いシャツを洗濯糊に浸しては干す作業をこなしていた。古着の白いシャツを素材に選んだ理由について、吉本さんに伺ったところ、次のように答えてくださった。

「古着には、それを着た人の"歴史"や"記憶"が染み込んでいると思うのです。服の中でも、白いシャツは汚れやシミがつきやすいですよね。その分、過去に生きた人の"痕跡"も顕著に現れていると考え、作品の素材にしています」

ワークショップ1ワークショップ2

以前、古着を用いて制作した作品の中から、聖歌のような大合唱が聞こえたような気がしたと語る吉本さん。その体験が、「響生」という作品のタイトルに繋がっているのだろう。また、今回は初の試みとして、作品とパフォーマンスのコラボレーションが第2部で行われる。「過去に生きた人々の"痕跡"が浮かび上がる中で、生身の人間がどう絡むか、私自身もすごく楽しみにしています」と吉本さんは目を輝かせた。

古着(シャツ)

そして迎えた第2部当日(11月7日)。三井ガーデンホテル柏の1階ロビーにおいて、作品「響生」を前に、パフォーマンスが始まった。パフォーマーは、柏市を中心に活動している田村元さん。全身白塗りで白い衣を身にまとった田村さんが登場すると、一気に異空間にいざなわれたような気持ちになった。

パフォーマンス1パフォーマンス2

「響生」に引き寄せられ、必死に手を伸ばすもはね返される。間を通り抜けようとしても、見えない力に阻まれる。「響生」の周りを、喜怒哀楽の表情を見せながら、ひたすら彷徨う。鐘の音や手拍子が励ますように鳴り響く中、ようやく「響生」の間をくぐり抜けることができた彼は、歓喜の叫び声を上げる。そして、彼はその場からゆっくりと立ち去り、後ろには何人もの男女が続いて、パフォーマンスの幕は閉じた。

パフォーマンス3パフォーマンス4

このようなパフォーマンスを言葉で説明するのはナンセンスかもしれないが、生まれてから死を迎えるまでの人間の姿を表現していたように思える。"今"を生きている私たちも、いずれは"過去"の存在になりうる。過去・現在・未来へと連綿と続く無数の人々の生涯を投影しているパフォーマンスだったのではないだろうか。

パフォーマンス5

「古着」が内包する"生"と"死"の諸相、そして"過去・現在・未来"の時の流れも連想させる吉本さんの作品は、11月29日(日)まで、三井ガーデンホテル柏の1階ロビーに展示されている。「今後は、今までにやったことのない新しいことに挑戦していきたいです」と豊富を語る吉本さんの爽やかな笑顔が印象的だった。


◆ 吉本直子さんのHP   http://naokoyoshimoto.com