二番街ウォッチング ― “二番街”という物語 ― (後編)
(記)柏木じゅん子 2009.6
前編ではアーケード内のフラッグから、かつての二番街の姿を辿ったが、続いて現在の二番街の姿を捉えるべく、一日商店街の中で過ごすことにした。
二番街入り口
朝10時。各店舗のシャッターが上がり、商店街が本格的に動き始める時間に、まず「パーラーナルシマ」を訪れた。ドンキホーテ(旧長崎屋)内にあるパーラーナルシマは、今から約40年前の長崎屋ビルの完成とともに開店し、美味しい料理とリーズナブルな価格で長く親しまれているお店である。
パーラーナルシマ(入り口) パーラーナルシマ店内
メニューを開くと、和食・洋食・デザートと各種揃っていて選ぶのに迷ったが、「おにぎりセット」を頼むことにした。落ち着いた雰囲気の店内で、出来たての温かいおにぎりを頬張っていると、数年前に話題を呼んだ映画「かもめ食堂」のワンシーンを思い出し、すっかり寛いだ気持ちになった。
 おにぎりセット
お店の方に伺ったところ、「デラックスランチ(ハンバーグ・しょうが焼き・目玉焼き・サラダ・ライス・味噌汁・お新香のセット)」のようなボリュームのあるメニューも人気が高いとのこと。 「なるべくお待たせせずに、料理をお出しするようにしています」というお話だったので、忙しくてゆっくり食べる時間がないときにも重宝しそうである。
ドンキホーテ前
「パーラーナルシマ」を出た後は、二番街を散策。休日ということもあって、家族連れが多い。アーリーサマーセールを開催中のマルイや、衣料品をお手頃価格で提供しているニューサンキはショッピングを楽しむ女性たちで賑わい、新星堂ではCD・楽器・本をじっくり選んでいる男性を多く見かけた。
マルイ 新星堂
柏市内で一番最初にオープンしたという二番街のマクドナルドには、ひっきりなしにお客が訪れている。そして、お昼が近づくにつれて、モンテローザ、949(くしきゅう) 、サプティペパーズ、ア・ラ・カンパーニュなどのランチメニューを眺めつつ、何を食べるか相談している家族やカップルが増えてきた。
ア・ラ・カンパーニュ
午後1時過ぎには、フラッグに掲げられている似顔絵の制作者、福永明子さんにお会いした。福永さんは柏以外でも活躍中で、東京日本橋の老舗のシャッターに浮世絵を描くという一大プロジェクトにも参加しており、何週間もかけて夜通しシャッターに向かい続けて、つい先日最新作が完成したばかりとのこと。週末の二番街の似顔絵テナントは日中、シャッター制作は夜中ということで、作業期間中は昼夜の切り替えが難しかったそうだ。それでも疲れを見せずに、似顔絵用のイスに座った子どもに微笑みかけながら筆を走らせていた。
福永明子さん
福永さんにフラッグについて伺ってみると、「私自身も、『似顔絵でたどる柏二番街をつくった人たち展』のために似顔絵を描いていたときは、まさかこんな風に大きなフラッグになるとは思ってもいなかったので、驚いたと同時に嬉しかったです。」とフラッグを見上げながらお話してくださった。
梅林堂周辺
二番街は駅前という立地の良さもあり、一日平均4万人が行き交う商店街である。夕方過ぎまで活気溢れる二番街の様子を眺め続けていると、雑踏の中に紛れている様々な世代の、様々な人生について、ふと思いがめぐった。
二番街(常陽銀行側)
今年『ポトスライムの舟』で第140回芥川賞を受賞した津村記久子の近著『八番筋カウンシル』(朝日新聞出版・2009/2)を始め、『珈琲屋の人々』(池永陽・双葉社・2009/1)、『どこから行っても遠い町』(川上弘美・新潮社・2008/11)のように、商店街が舞台となった物語が近年立て続けに発表されている。どの作品も、商店街で生きる人々や、商店街を訪れる人々の人生が少しずつ交錯しながら語られていくが、それは、商店街が人々の「暮らし」に密着した場所であり、様々な人間模様が反映される場所でもあるので、物語の舞台になりやすいということなのかもしれない。私も二番街の過去と現在の姿を重ね合わせる中で、“二番街”という物語に少しでも触れる事ができたように思う。